2016-17年シーズンのVリーグをもって引退したバレーボール界のレジェンドofレジェンド、木村沙織。
彼女の凄さは既に過去記事でも述べた通りだが、メディアはいま必死になって「ポスト木村沙織」を探している。
候補者① 古賀紗理那
1番最初にポスト木村として持ち上げられたのは古賀紗理那。
180cmとまあまあの高さ(世界的には小柄だが)の割には動けてブロックも良くて、レシーブも若い割には上手い方、おまけになかなか可愛らしいルックスを兼ね備えていたこともあり、高校時代からメディアが目を付けた。
高校1年の時には既にワンマンエースとしてチームを引っ張り、春高バレー準決勝までチームを導いた。
おまけにこの前年の2012年アジアユース選手権ではベストスコアラー&MVPを獲得するという華々しい成績を残し、海外のバレーファンからは「キムヨンギョン2世」などと喝采を浴びるほどであった。
たしかに当時の古賀はスパイクの高さ、キレも素晴らしく、ブロックも素晴らしくレシーブもやっていたので、将来がとても楽しみに思えた。
2015年にはワールドカップで三大大会デビューを果たし、木村沙織を超える総得点を叩き出してブレーク。同じく19歳でワールドカップデビューを飾ったメグカナこと栗原恵、大山加奈を超える逸材として持て囃された。
ところが、翌年のリオデジャネイロ五輪最終予選では一大スランプに。打っても打ってもブロックにかかり、大事な場面ではスパイクをふかしてアウトにするなどいいとこ無しで、眞鍋監督の信頼を完全に失ってしまった。
最後のチャンスとして与えられたワールドグランプリでもパッとした活躍が出来ず、誰も予想しなかった、まさかのリオデジャネイロ五輪代表落選の憂き目を見ることとなった。
思うに、古賀の抱える問題は2つある。
一つ目は、打点の低さ。
古賀はスパイクの助走の際、腕を曲げて肘から上しか振れていない。そのため打点が意外と低い。
おまけに、上に跳ぶジャンプではなく、前に跳んだ勢いをボールに乗せるタイプのスパイカー(栗原恵なんかもこのタイプ)のため、ちょっとネットから離れたトスになると被り気味の姿勢となり球威が激減する。
木村沙織はあんなフニャフニャした動きだが意外とジャンプ力はあり打点はなかなか高かった。
二つ目の問題はサーブレシーブ。
ウィングスパイカーなら必須の技術となるサーブレシーブが非常に不安定なのだ。
まぁ20歳前後の木村沙織もサーブレシーブは結構乱れてて、それでも何百本も受け続けているうちに上達していったので、古賀もまだ成長する可能性は大いにある。
2017年、木村不在の全日本でエースとして持ち上げられたにも関わらず、肝心のアジア選手権決勝やグラチャンを怪我で棒に振るあたりも、「持ってない」感が強い。
2017-18年シーズンのVリーグでも軒並み低い成績となっており、木村沙織が同い年だった頃に比べるとかなり物足りない出来となっている。
ブロックは非常にいいし、高校時代の輝きは本物だったのだから、古賀には期待したいけど…
候補者② 黒後愛
古賀がモタモタしているのを見て不安になったメディアは、古賀より更に若手の黒後愛に目を付けた。
木村沙織と同じ成徳高校出身で春高2連覇のエース、古賀と同じ180cmとまあまぁの上背、おまけに愛くるしいルックス(←メディア的には1番大事)と、メディアが放ってはおかない能力の持ち主。
黒後の場合、サーブレシーブはまだまだ発展途上だが、古賀と違って積極的にオーバーハンドで返そうと試みているあたり上達は黒後の方が早そう。
ただ黒後もスパイクがどうも…。
パワーを売りにしてる割にはブロックを吹っ飛ばすスパイクは多くないし、打点も高くないので木村のような超インナーの本数が少ない。
でも黒後はまだルーキーイヤーなので全てが未知数。
とりあえず今年の全日本でどれだけやれるかみてみないことにら何とも言えないけど、全盛期の木村並みの活躍は全く想像できない。
候補者③ 石井優希
古賀、黒後ときてすっかり忘れ去られているのが石井優希。
年齢的にも1991年生まれ、今年で27歳と既にベテランの域にあり、木村沙織の後継者というには遅すぎる。
石井優希も古賀、黒後と同じ180cmなのだが、これまではどうもパッとしない成績だった。
2013年から全日本A代表として定着するも、サーブレシーブが不安定だったため使い勝手が悪く、同じ身長で若い古賀にスタメンを奪われることが多くなった。
ただ古賀が自爆した2016年には消去法のような形で全日本のスタメンに定着。
韓国戦では大きくサーブレシーブが乱れて戦犯扱いされはしたものの、全体を通して木村沙織より安定して得点を稼いだ。
2017年はいまいちパッとせず、シーズン途中でまさかの全日本落ちという憂き目を見たが、2017-18年シーズンのVリーグでその鬱憤を晴らす大活躍。
久光の優勝に大きく貢献し、MVPを獲得。
おまけに何と、苦手としていたサーブレシーブで大きな成長を見せてレシーブ賞を受賞したのである。
苦手としていたサーブレシーブを克服して大きく成長したのは木村沙織が辿った道と同じ(木村沙織の方がもっと早く成長したが)。
Vリーグ決勝の試合を見ていても高い打点からコースを見て打ち分けているし、レシーブも良く、完全に古賀と黒後より一歩先のステップへ進んだように感じられた。
思えばこの石井優希もずっと木村沙織が憧れと言い続けてきた選手だった。
中田久美に「もっと上を目指せ!」と言われてコスタグランデに憧れの選手を変えた時期もあるが、木村沙織に失礼だと思う。中田久美より木村沙織の方が選手としての格は上だし、実績を見ても全盛期の木村はコスタグランデより上の選手。
石井の髪型や仕草を見れば、いかに木村に憧れているかが分かる。
古賀や黒後と違い、オリンピックの厳しさを経験して一皮向けた石井優希が、案外1番木村沙織のいたポジションに近いのかもしれない。